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伊藤さんの意見をどう思いますか。

市町村ごとに全ての機能はいらない 互いに補完する「東北」という新たな地域をつくれ

阪神・淡路大震災と今回の東日本大震災とは全くの別物だ。
私は都市計画の専門家という立場から阪神・淡路復興委員会の委員を務めたが、メンバーは私を含め7人。これだけの人数でできたのは、災害がある意味「限定的」だったからだ。阪神・淡路大震災は直線距離にして30~40kmを範囲とする都市型の災害である。だから、多くは建設省(当時)の対応で進められた。
加えて、住民の生活スタイルや考え方にバラつきが少なく、それぞれが“神戸”という街のイメージを共有していたため、復興を進めていくうえでも割合にコンセンサスが得やすかった。また自営業者が多く、昔から海外取引が盛んという土地柄もあって、被災地域の事業再開を早めることを可能にした。そうした背景も、復興に寄与した感がある。
翻って今回はどうか。被災地域は太平洋沿岸100kmに及ぶうえ、仙台市を中心とする大都市圏と沿岸部の農漁村地域が混在する。このため、がれき処理一つを取っても、国土交通省や農林水産省など関係省庁が多く、なかなか対応が進まないのだ。その上、各地域により人口規模、自然条件、産業構造は大きく異なり、そこに暮らす人々の考え方を一つにするのは難しい。だからこそ阪神・淡路大震災時以上に、きめ細かく住民の話を聞いていくしかない。
東北一の都市、仙台をもっと輝かせよ
具体的に今後どう街づくりを進めていくか。岩手、宮城、福島3県の知事が独立的な形で当面の課題に追われているのは致し方ないこととして、国は国土計画の観点から国全体で被災地域、ひいては東日本全体の将来をどう組み立てるか議論をする必要がある。
甚大な被害をプラスに転ずるような国土の新しい利用法とはどのようなものか。復興計画は、将来の人口予測を抜きにして考えることはできない。周知のとおり、日本の総人口は年々減り続けている。今から約20年後の2030年、日本の人口は10%、東北地方においては20%程度減少すると推定されている。そうした状況を踏まえると、市町村や県という単位ではなく、東北を一つの大きな地域として捉えることが重要だ。すべての市町村に一律に機能を持たせるのではなく、東北エリア内に機能を分散させ、互いに補完し合うのだ。
まず国としてやるべきは、東北一の都市である仙台市にテコ入れをし、その魅力をさらに高めることである。新しい産業やサービス、研究機関などをつくり、特に若い人たちが暮らしたいと思う街にすることだ。「魅力的な就業機会がたくさんある」「子供を安心して学校に通わせられる」――。仙台をそんな街にすることが何より重要だと私は思う。
北上川流域の工業地帯もまた重要なポイントだ。今回の震災で図らずも明らかになったように、この一帯が国内の基幹的な製造業を支えていることは間違いない。この辺りは内陸部であり、津波被害の心配はない。そこでこれを機に国が手当てし、製造業をさらにこの地域に集積させるというのはどうだろう。東北人の細やかさや粘り強さを生かす研究開発型の工業を展開するのもいい。要は、若い世代にとって魅力的な雇用の場を用意できればいいのだ。
「復興のため雇用の機会をつくれ」と言われても、すべての市町村に等しくはつくれない。ただ東北では遠距離通勤が常識で、通勤圏内は50~60kmと広い。震災以前から相互に行ったり来たりするのは当たり前。市町村の一つひとつが閉鎖的な形で完結するのではなく、これまでも有機的に結びついてきている。そこで方策としては、宮城県であれば石巻市や気仙沼市などの中核都市に重点的に工場や商業施設を誘致し、肝心の雇用を確保するのだ。一様にやるよりよほど効率がいい。
こうしたことに積極的に取り組んでいけば、東北地方全体として人を弾力的にとどめ、人口の減少を最小限に食い止められるのではなかろうか。
どうしたら復興のスピードを上げられるか
ここまで長期的な施策について話してきたが、短期的スパンではどうするか。復興には恐らく今後20年程度はかかるだろうが、被災者は明日の住まいと仕事を必要としている。復興はスピードをもって取り組まねばならない。
政府は4月に、「建築制限特例法」を閣議決定した。これは被災地の健全な復興を図るため、災害発生の日から最長で8カ月間、自治体が区域を指定して建築制限または禁止できるという特例措置だ。この期限が切れるのを機に、どう街づくりを進めていくか。
沿岸部の地域であれば、漁業が重要な産業だ。やはり港周辺には水産加工関連施設をつくらざるを得ないが、住まいのほか、これまで低地にあった役場やホテル、病院などはすべて高台に移す必要がある。しかし高所移転にかかる様々なプロセスを考えると、3~4年でできるとは到底思えない。
そこで提案したいのは、かつての市街地に仕事場兼住宅の鉄筋コンクリート造りの建築物を最優先で建てることだ。今回の震災でも、4~5階建ての鉄筋コンクリートの建築物は波打ち際にあっても、津波に耐えて倒壊せず、耐波性は証明された。ただし、ここに住むのは基本的に高齢者や子供たちではなく、例えば漁業関係者など体力に自信のある働き手が望ましい。
市街地には鉄筋コンクリート造りの建物以外、建てないわけではない。例えば、津波災害が生じた際、鉄筋コンクリート造りの建築物は避難拠点の役割も果たすから、避難路などをきちんと整備したうえで、この建物の半径200m以内なら木造建築を許すというのも一案だ。
このように、自然の理や地域特性を生かした機能集積型の街づくりを進めるべき、というのが私の見解だ。この方が住民も納得しやすく、復興のスピードアップも図れるのではなかろうか。
沿岸部の被災地をくまなく回り、市町村長と意見交換をした時にも、そうした街づくりこそが被災者に対して果たすべき支援であると痛感した。単に論じているばかりではいけない。今後、具体的な内容を発表できると思うが、私は現在、こうした街づくりに向けた施策を実現するために奔走中である。あまり陽の当たっていない市町村の力になれれば幸いだ。

伊藤 滋(いとう しげる)
都市計画家・早稲田大学特命教授
1931年東京都生まれ。東京大学農学部林学科、工学部建築学科卒業。同大学大学院工学系研究科建築学博士課程修了。工学博士。現在、早稲田大学特命教授、東京大学名誉教授、日本地域開発センター会長。専門は都市防災論、国土・都市計画。阪神・淡路復興委員会委員も務めた。
http://ps.nikkei.co.jp/imakoso11/opinion/opinion03.html

  • 質問者:匿名
  • 質問日時:2011-08-15 03:31:42
  • 0

私も同感ですね。
今の被災人口は560万人くらいですから
そこへ、わかっているだけで23兆円、
あといくら税金がいるかわかりません
1つの行政区分で効率よくすべきですし。
市町村長や議員や公務員は、
不要な仕事をそれぞれが始めますから
半分以下にすべきですね。
漁港、避難場所、住居、など集約して
災害につよいものにしていくべきですし
千年先でも耐えれるものにすべきと思いますね。

  • 回答者:匿名 (質問から6時間後)
  • 0
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お礼コメント

1000年先も耐えられるといいですね。

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同感です。
将来の道州制を見据えたいい計画だと思います。

  • 回答者:匿名希望 (質問から2日後)
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全く同感です。
180度考え方を切り替える必要がありますね。

  • 回答者:匿名 (質問から1日後)
  • 0
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道州制を進めるきっかけになるのでしょうか。

住人の利益になるのでしたら、こういうのもありでしょう。

  • 回答者:匿名 (質問から13時間後)
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日本人特有の性向として、結局「仙台一極集中」になりそうな気がするなぁ。東京より近くていいや、って地元の方が仰るならそれで良いけど。例えば郡山やいわきは仙台より東京に出る方が今のところ、楽。

  • 回答者:ぐーたら (質問から10時間後)
  • 0
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とても参考になり、非常に満足しました。回答ありがとうございました。

おっしゃる通りです。
従来のように復興=復旧をやっていたのでは、
絶対に失敗して、多大の債務を増やしますね。

  • 回答者:とくめい (質問から8時間後)
  • 0
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とても参考になり、非常に満足しました。回答ありがとうございました。

道州制、広域ブロックをにらんだ良い計画だと思います。
地元に住みたいという住民感情を押し殺さない
柔軟かつ経済的な計画が実行されることを願います。

  • 回答者:くまもん (質問から7時間後)
  • 0
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はい、そのように思います。
細かく自治体の線を引いておらが村、おらが街の復興って言うのはもう無理かもしれません。
街自体は高台にすべて移転させ、漁業関係の建物だけ海辺に作り、避難経路を2つ以上確保、災害時にはすべて一斉に避難、と言う街を作るしかありませんね。
漁業関係の建物でコンクリートの頑強な建物を作ると言う事です。
海から恵みを受けていた町ですので、住む所と仕事をする所を分けるしかないでしょう。

  • 回答者:匿名希望 (質問から6時間後)
  • 0
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