カウンセリング受診経験はありませんが、かつて心理学専攻だった者です。
まず、医師と臨床心理士がまったく別物だということを理解してもらわないといけません。
この質問での「カウンセリング」とは多分、医師が行なうものではなく臨床心理士が行なうものだろうと思います。
医師は国家資格なので、病名の断定も出来ますし薬の処方も出来ます。生理学的に目の前の病気を治すのが医師の役目なので、患者のこれまでの人生とか悩みを詳しく聞くことは医師はあまりやってくれません。
臨床心理士は民間の資格なので病名の断定や薬の処方は法律で出来ません。保険がきかないのでカウンセリング料金もどうしても医師にかかったときよりは割高になります。
病気を治すというよりは相談者の生い立ちや悩みなどを丹念に対話で聞き出して、憂鬱な気分の原因がどこにあるのか突き止めようとするのが臨床心理士のスタンスです。
臨床心理士には相談者と接する際の基本姿勢がいくつか決められています。
(1) 相談者の意見に反論せず共感に努め、聞き役に徹する
(2) 相談者に、ああしろこうしろといった具体的な指示を与えない
などです。
臨床心理士のカウンセリングは、心理士が先に立って引っ張るものではなく、患者自身に自主的に気付いてもらうことを狙いにしています。なので聞き役には回りますが指示は出さないのが普通です。
それが相談者にとっては「暖簾に腕押し」みたいに感じられて物足りなく感じてしまうケースも多いようです。
心理士のカウンセリングを受けに来る人の中には医師と同じだと誤解している人も多くいるようです。
医師なら「よく寝なさい」「この体操をしなさい」など手取り足取り指示を出してくれるので、心理士にも同じような対応を期待して、結果、期待はずれに終わってしまうのです。
また、心理士のカウンセリングは何年も粘り強く続ける必要がある場合も多くて、心理士自身はそれを分かっていますが相談者側がそれを分かっていません。
ほんの数回の対面でめざましくうつが改善すると過度な期待を抱いたまま相談に来て現実に苛立ってしまう人が多いのが実情です。
相談者側がもう少し、医師と臨床心理士の違いを理解した上で相談に来ることが出来ればいいんですが、これは臨床心理士側がまだ世間に対してしっかり自分をアピールできてないんだと思います。
心理士側が努力不足なのであって、相談者が心理士の対応にガッカリしてしまうのは相談者側の非ではないと私個人は思っています。
また、先ほども述べたように、長期続けるのが望ましい心理カウンセリングにも関わらず、保険が効かない高い料金が相談者を短期であきらめさせてしまっている原因になっています。
これは国などが心理カウンセリングのシステムをしっかり作り上げていない構造上の問題です。これもまた、相談者にはなにも非のないところで問題点が残っていると思います。もっと安価でカウンセリングが受けられるようにするべきだということは私も強く感じます。
私から相談者にお願いしたいのは、臨床心理士がどういうものなのかということも少しだけ勉強してからカウンセリングを受けてほしいということです。心理士がなにを狙っているのか分かった上で相談できれば、それだけで効果は大きく変わってきます。
カウンセリングは相談者の気分によっても効果の上がり方に差が出ます。相談者が「期待はずれだ」と思いながらなのか「しっかり聞いてもらった」と思いながらなのか…それはとても重要な点です。
最後に、もし不幸にもカウンセラーに不信感を抱いてしまった場合、そのカウンセリングは相談者の方から自由に打ち切ることができます。心理士が呼び出しの連絡をしてくるケースはありません。
カウンセリングで一番望ましくないとされているのは「心理士と相談者が不信感を持ったままカウンセリングが続けられる」ことです。
カウンセリングそのものを不信視してほしくはないですが、今の心理士とうまくいかないなら別の心理士に変更することは全然問題ないです。
===補足===
追記させてもらいます。
相談者が心理士に対してがっかりしないためにはどんな心構えでいるのがいいだろうかと、私もちょっと考えてみました。
基本的に、心理カウンセリングを具体的な解決法を得るための場所だと考えてしまうと相談者は結果が得られずツラくなってしまうでしょう。
そうではなく、自分の中に溜まった不満を思いっきり吐き出して気を軽くするための場だと考え方を改めてみるのがコツかもしれません。
カウンセリングの最後に「気がすむまで聞いてもらえた」という気持で終われるように心がけて、指示がもらえなくても不満を吐き出せたことだけでもまず満足してみることが第一歩かもしれません。
なにかいいものを心理士からもらおうと期待するのではなく、自分の中にあった悪いものを心理士に向けて吐き出しただけでも効果はあったんだ……そう考えてみることがいいかもしれません。
- 回答者:かつては心理学専攻 (質問から1日後)
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