大学で心理学専攻でした。
加藤容疑者の親が非常に教育熱心だったと言われています。
あの容疑者は、まだ小学校くらいの時から、親に「いい大学に行くことが幸せだ」的に徹底的に言い聞かされて、その生き方しか満足できない状態に置かれていたんではないでしょうか。
子供の頃は世間のことも何も分かりませんから、分からないまま親の言う事を信じ切って「そうか、勉強してれば成功できるのか」という思考パターンだけに陥ってしまったのではないかと思いました。
親の言う事をよくきく「いい子」の性格がすごくアダになってしまった気がします。親によって全て決めてもらって、精神的に去勢されてしまっているような気味悪さを感じるというか・・・。
少々威勢がよく、親にも適度に反抗できる子供だったら、こういう事件は起こしていなかったかもしれません。
中学生の頃から「北海道大学に行く」と口にしていたそうです。国立の中でもものすごい難関大学です。中学の卒業文集を全て英文で書いている点なども、「自分はこんなに優秀なんだ」という顕示欲みたいなものを強く感じます。
中学時代は確かに優秀な成績だったそうですが、高校選びで自分の実力以上の学校を選んでしまったことが、この容疑者のそもそもの間違いだと思います。
中途半端な実力のまま一流の中に入りたがってしまったというか、やはり自分の身の丈に合った学校レベルを選んでおかないと、その後全ての人生の節目が順々に狂っていくということだと思います。
親が、自分の子供の実力を全く無視して実現不可能な目標を子供に設定しまったことが悲劇だったと思います。
容疑者の出身高校はぼぼ全員が４年制大学に進む高レベルだと聞きましたが、容疑者は短期専門学校に進むしかありませんでした。これはかなりの屈辱だったと思います。
容疑者が親から教わった生き方は「猛勉強で一流大学に入学し、一流企業に就職し、正社員で定年まで勤め上げる」というルートしかありませんでした。子供の頃から頭に擦り込まれたルートなので、少しでもそれから外れると、猛烈な憤りを感じたはずです。
しかし現実の生活は、親の敷いたレールから外れていくばかりで妥協の連続でした。まず「４年生大学じゃなくて専門学校」で妥協。「一流企業じゃなくて中小企業に就職」で妥協。「正社員じゃなくて派遣社員」で妥協。「終身雇用じゃなくて短期労働者」で妥協・・・。
容疑者はきっと犯行当時も「できれば一流企業で正社員として働きたい」という考えは持ち続けていたはずで、そういう容疑者にとっては「自分が派遣社員である」という現状がそもそも受け入れられないものだったはずです。
よく「静岡の会社で、つなぎ作業服がなくて犯行に至った」という言われ方をしますが、それはあくまでも引き金になった枝葉の理由でしょう。
「一流企業の正社員」を望んでいる人間である以上、「中小企業の派遣社員」であれば、彼が静岡の問題の会社以外に勤めていたとしても、たとえつなぎのトラブルがなかったとしても、いずれ事件を起こしていただろうことは、容易に想像できます。
彼の犯行そのものはもちろん許されないものです。ですが、彼が感じていた世間への理不尽な思い（一度の小さな失敗でやり直しが効かない社会にも問題の一因があるという気持ち）は、そこそこ的（まと）を射ていると思います。
不幸だったのは、彼がもともと、おたく的傾向でコミュニケーションが苦手な性格があって、自分の主張を多くの言葉を要して筋道立てて表現できなかったことだと思います。
たった数行の投げやりなメールは散発的にいくらでも書けたかもしれませんが、彼は原稿用紙が何枚も必要になるような言葉の量で集中的に合法的に自分の不満を表現することが必要だったんだと思います。
